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2011.06.13

ようやく・・・

大変お待たせしました
三話目をようやくアップします

一週間前 老人

いつも通り本編は続きからどうぞ
感想、指摘はコメントへお願いします






一週間前 老人


朝から嫌な予感はしていた。
アラームをセットしておいた携帯は夜中のうちにバッテリーが切れていたし、
二階から降りるとき階段で足を踏み外し腰をしたたか打ちつけ、
着替えの際にベルトがちぎれワイシャツのボタンは弾けとび、
ようやく朝食にありつけたかと思うと、
トーストを床に落としよりにもよってバターを塗りたくった面が下になった。
惨事をざっと片付けてあわてて登校しようとすると、かばんの底に穴が開き更なる大惨事へと発展する。
ここまで不幸が続けば家を出たときにだって何かが起こるなどとは、容易に予測できるだろう。
もっとも玄関ドアの前に人が倒れていようとは誰も考えなかっただろう。
「……」
富山の冬は厳しい。
北海道ほどではないにしろ、湿気を多く含んだ雪は北方よりもはるかに体温を奪う。
二月の春先となっては、徐々に温まってきた気温で溶けた雪がさらに周りの雪の湿度を上げる。
そんな中にぱっと見七十過ぎの老体が転がっているのだ。
真っ先に考えるのはホームレスの死体か。
はたまた食い扶持を失った大人の成れの果てか。
しかし、少なくとも身内や親類でないことを確認し、道弘の頭の中でこの老人をどうするか選択肢が現れた。
一、親切に声をかける
二、警察に電話を掛ける
三、無視して登校する
「……」
迷わず三を選択し一気に走りぬけようとした。
玄関扉から家の正門まで五歩あれば出られる。
図らずとも激しくなっていた動悸をを深呼吸で整え……
ダッシュ!

あと一歩で老人の射程範囲から逃れられるというときに、道弘の足は捕らえられた。
足に何が絡んでいるかは見るまでもない。
「……少年よ」
「さてと今日は何の授業があったか……」
「倒れている老人を助けようとは思わんのか」
「たしか石浦の数学があったな」
「いや、無視せんで欲しいんだが」
「朝礼で高橋の生活指導もあったっけな早くいかないと」
「露骨に聞かんふりせんで――痛い痛い痛い踏まんでくれいたたたたたたたたたっ」
「足元にあるのは石だ。きっと石がしがみついてきているに違いない」
「暗示せんでいいから、この足どけてくれんかなッ!?」
さすがに相手が降参の意思表示をしたのにやめないわけにはいかない。
道弘は老人の顔面に押し付けていた右足をどかした。
見れば老人はそれほど弱っているようではなかった。
そこで石にけつまずいて倒れましたといったようである。
それがなぜ自分の家の前なのか、ということに疑問は持てど、
それ以上に老人の背中にある異様な痕跡のほうが彼の関心をそそったのだ。
「じーさん。その背中どうした?」
二つの穴が白衣には開いていた。
ふちがやや黒く焦げ、そう、ちょうど銃弾にえぐられたような……。
「なに、ちょっと犬に噛まれただけじゃ」
「いつから犬の歯は布が焦げるくらいの高温を出すようになったんだ?」
「あと十年もすればそうなるじゃろうよ」
老人はこともなげに言ってのけ、向くりと立ち上がった。
思いほか老人の体格はしっかりとしていた。
とても行き倒れるような風貌ではない。
そして
「邪魔したの」
といって老人は背を向け滝本家の正門に向かい……
ドタッ!
「あ、こけた」
同時にうつぶせに倒れた老人の腹から、
ぎゅうぅぅぅぅぅ……
と間の抜けた音が響いたのだった。
「……すまんが。……何か食わせてくれんか?」
「……はぁ」
成り行きとはいえども、この老人と係わり合いになったことを道弘は早くも後悔し始めていた。




「じいさん……。もう出せるモンねえぞ……」
「いや、もう結構じゃ。すまんかったの」
リビングのテーブルに形成された皿の山脈を切り崩して、道弘は老人をにらみつけた。
よくよく考えてみれば、自分は老人の素性すら聞いていなかったのだ。
「ったく。冷蔵庫の中身全部食いやがって」
嫌味たっぷりに言ったつもりだったが、少しの罪悪感も感じさせていなかったようだ。
……まったく、忌々しい。
舌打ちして皿を運んでいく道弘に、老人は爪楊枝をくわえてカッカと一笑した。
「いや、すまんすまん。礼に1つ面白い話をしてやろう」
「話よりも飯代を払ってもらいたいんだが」
「若いもんが細かいことを気にしちゃいかん」
ずずっと汚らしく音を立てて湯呑を空にした老人は、
内ポケットに手を伸ばしてくしゃくしゃになった紙片を取り出した。
形からするにおそらく名刺だろう。
もちろん道弘とはとんと縁のない代物だ。
そして名刺にはそれこそ縁のない文字が整然と並んでいた。
「……で、研究機関の所長さんが何の話をしてくれるんだ?東堂辰巳さんよ?」
老人の名刺には、所属の研究機関か何かの名称が、彼の名前の横に印刷されている。
と。

 国立生物応用学実験施設『CORONEY』所長 東堂辰巳

いったい何の研究機関だ?
ゲームじゃあるまいに、こんな意味不明の名称は。
想像はできても考えたくない字面だ。
「研究者が出来る話なぞ、決まっておろう」
……つまり、生物分野のはなしという事か。
余談だが、道弘の通う東越中高校は二年次から生物分野を学ぶことになっている。
その折、とりあえず老人の話に付き合ってみることにした。
「時に少年、虫には興味があるかな」
「ないね」
道弘は間髪入れずに答えた。
というのも幼少のころから、虫と聞いていい思い出がなかったからだが。
「虫が三つの蟲なら興味がないこともないが……」
「そりゃワシの専門じゃあないわい。畑違いじゃ」
口の端で爪楊枝をもてあそびながら東堂は言う。
「虫というのは面白いもんでな。
 特に小さなものほど特異な性格をしている。そこが何より面白い。
見た目だけで、人間への害だけで気持ち悪いだのぬかすのは、些か酷なことよ」
「個人の主観ってをは無視した意見だな」
「学会とはそんなものよ。ただある事実のみを追究するのが研究員の務めじゃ」
「んで、礼になるような話ってのは?とてもそんな風には聞こえないが」
まあそう急かすな。まだ前座じゃと、東堂は道弘にもう一杯茶を頼んだ。
「のどが渇いては舌のすべりも悪くなる」
「……なんかその下をまず切ってやりたくなったよ」
「ふむ、その言葉、そのまま返していいかの。おぬしは皮肉が過ぎるぞ」
「うるせえ。生まれつきの性格なんぞそう簡単に変えられるもんか」
老人、東堂の前に湯呑を叩き付け道弘は再び向き合う。
いつまでも本題に入らないようなら、得体の知れない不審者には即刻退場願おう。
よく考えたらこの老人とは知り合ってせいぜい一時間しかたっていない。
そんなやつを家に入れている時点でおかしいことに今更気づいた。
さっさと引っ張り出そう。
そう思って立とうとしたその矢先、東堂がカツリと音を立てて湯呑を下ろした。
そしてにやりと口の端を吊り上げ
「さて、生物の授業でも始めようじゃないか」

東堂の射抜くような目線に、道弘は知らず知らず腰を下ろしていた。




結構散々な文章ですがご勘弁を
次回は生物の授業です
……いえ、別にアッーな方向ではないです
ええ、ホントに
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